北海道に生息する日本最大のクマであるヒグマ。
ヒグマに襲われた事件として、三毛別の事件と日高山脈を登山していた福岡大ワンダーフォーゲル同好会の事件は特に有名な話ですよね。
日高山脈のカムイエクウチカウシ山で起こった悲しいヒグマ事件について、勉強した事をまとめたいと思います。
- 北海道の羆事件が知りたい
- あまり痛々しくない感じで知りたい
と思っている方の参考になれば幸いです。
なるべく悲惨な内容の記述は避け、簡単に要点だけをまとめています。
マイルドに、優しく、ふんわりした内容でグロさ回避をモットーにしています。
>>北海道の山岳部OB登山者が考えるヒグマに遭ったら絶対注意する事
福岡大ワンゲルを襲ったヒグマ
中札内のピョウタンの滝の近くにある、日高山脈山岳センター。
こちらの出入り口のところにどーんといらっしゃるのが、こちらのヒグマです。
ヒグマと言えば、観光地に置いてある巨大な剥製や、クマ牧場や動物園で見る大きな姿のイメージが多いです。
しかし、日高山脈山岳センターに置かれているそのヒグマのサイズは、剥製になる過程で小さくなったのだとしても、かなり小柄です。
このヒグマは、日高山脈のカムイエクウチカウシ山で福岡大ワンダーフォーゲル同好会を襲ったとして、十勝から派遣されたハンターによって撃たれました。
福岡大ワンダーフォーゲル同好会とこのヒグマの間には、一体何があって、悲劇が生まれてしまったのでしょうか。
※福岡大ワンダーフォーゲル同好会以下、福岡大ワンゲルと短縮します。
カムイエクウチカウシ山の事件
日高山脈のカムイエクウチカウシ山周辺の八の沢カールで、1970年7月に福岡大ワンゲルがヒグマに襲われた事件のあらましを、簡単にまとめてました。
福岡大ワンダーフォーゲル同好会の登山計画
この時、福岡大の他に北海道学園大学・鳥取大学・中央鉄道大学(東京)など、他の大学のパーティーも付近を登っていました。
ヒグマと遭遇するまで
- 7月14日 十勝・新得駅に到着。芽室岳を登り始める。
- 7月15日 芽室岳山頂に到着。
- 7月23日 幌尻岳、七つ沼カールに到着。
- 7月25日 エサオマントッタベツ山頂、春別岳へ進む。ヒグマと遭遇。
16時頃にテントを設営していた時、白っぽくそこまで大きくないヒグマが5人の前に現れました。
初めて見るヒグマに対して、5人は写真を撮ったり、珍しがったといいます。
ヒグマがカバンから離れた隙に、5人はカバンを回収してテントに入りました。
数時間後、ヒグマは再度現れて5人のテントの匂いを嗅いだり、爪でテントに穴を開けたりします。
逃げてもヒグマに追いかけられる
カバンを持っていかれても、またヒグマが居なくなった時に回収しています。
5人の内2人が、ヒグマが出た事を周囲に知らせる為に別行動に出ます。
2人は道の途中で、ヒグマに襲われたので下山を判断した北海学園大学のパーティーと会います。(福岡大ワンゲルを襲ったヒグマと同一個体だと考えられる)
北海学園のパーティーに自分達の情報を伝え、ハンターの要請をお願いした2人は、仲間の所にもどり、登山を続けました。
この時、5人も下山する事を選んでいたら結果は変わっていたのかも知れません。
26日の昼には5人はカムイエクウチカウシ山の山頂近くにいました。
そして、夕方にまた同じヒグマがやってきます。
移動する5人に、ヒグマはついてきていたのです。
八の沢カールでヒグマに襲われる
「ヒグマだ!」叫んで逃げる中、5人の内の1人がヒグマに追いかけられて姿を消します。
鳥取大学や中央鉄道学園のパーティーも、この時悲鳴が聞こえる場所にいました。
悲鳴を聞いていた人々は、なんとかヒグマを追おうとしますが、上手くいきません。鳥取大学・中央鉄道大学はここで撤退決めます。
気付くと、残ったのは3人だけになっていました。逃げる途中で、また1人居なくなっていたのです。
5m先が見えるかどうかの霧の中、突然ヒグマが出てきました。
3人のうち1人が走って逃げていくのを、ヒグマは追いかけて姿を消します。
そして、残った2人のみが無事に下山する事ができました。
ヒグマ撃たれる
福岡大ワンゲルを襲ったヒグマを探している中、襲われた3人の遺体も見つかりました。
皆衣服は剥ぎ取られ、顔や体には無数の爪痕や傷がある姿でした。
その中の1人が残した、メモも見つかっています。
そのメモには、震える字で仲間への思い、ヒグマへの恐怖や不安が綴られていました。
銃を持つハンターの姿すら恐れなかった事から、このヒグマが福岡大ワンゲルを襲ったのだろうと判別されたのです。
お腹の中を開いた時、ジャガイモの皮やビニール袋などは入っていたものの、人の肉と思われるものは入っていませんでした。
道内組と本州組で分かれる判断
福岡大ワンゲルが山に居た時、周辺には北海道の大学と、本州の大学の登山に関する部も活動していました。
- 北海道の大学はすぐに撤退を決めた
- 本州の大学は撤退に躊躇した
クマは人間を襲ってこない、と事前の調べで福岡大は考えていました。そのため、撤退に躊躇した要因の一つだとされています。
三毛別のヒグマ事件は、1915年、大正時代に起きた事件です。
万が一、福岡大ワンゲルの人々が三毛別の事件の話を聞いていたとしても、今の時代にそんな狂暴なヒグマが出る訳ない、と思っていたのかも知れません。
日高山脈縦走に耐えられる体力や、周辺情報や天候に対する知識、医療知識など、登山に必要な物は彼らも事前に整えていました。
また、彼らにとっては福岡からはるばる北海道へやってきての登山です。
何が何でも成功させる、と思っていたのかもしれません。
そして、この福岡大ワンゲルのヒグマ事件以降、ヒグマと遭遇してしまった時の適切な対処法が考え出されていく事になります。
ヒグマ事件を繰り返さないために
- ヒグマがいじった荷物は取り返そうとしない
- ヒグマは逃げるものを追いかける
- 大声などをあげても逃げない個体もいる
- ヒグマの食べ残しがある時は、その周囲に何度も現れる
- ヒグマが隠した食べ残しをいじらない、近寄らない
など、福岡大ワンゲルの事件がきっかけになり、ヒグマへの考え方や逃げる時の考え方なども改められるようになりました。
最後に
中札内村のピョウタンの滝近くにある、日高山脈山岳センターで見たヒグマの剥製から福岡大の事件を勉強してみました。
いつもは遠くに壮大に見える日高山脈の連なりですが、意外と身近な存在です。
そして、人里に近い場所でのヒグマ目撃の話を聞く事もあります。
ただ怖い存在、と思うだけではなく、何故事件は起こってしまったのかについて調べてみると、人間が出来る事、ヒグマに対して、してはいけない事がよく分かりました。
以上、釧路の動物園にいるヒグマは巨大で怖いと思っている・おかめでした。